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第5章 まとめ:基金を母体とした画廊・ギャラリー振興支援機構の創設をめざして
1.長期目標:統括支援のための画廊・ギャラリー振興支援機構の創設
銀座の画廊・ギャラリーは、作家、研究者、キュレイター、ギャラリスト、美術館などの関係者・関係機関が個別に努力し支えているが、それら関係者の活動を全体的に把握し、必要な情報発信を行ったり戦略を立てて支援を行ったりする中心となる機関が存在しない。
組織的に展開する音楽や舞台芸術などの活動と比べると、資金調達や、人材育成等様々な面で、限界や不都合が生じているのが現状である。
こうした状況を解消し、今回の議題に上がった問題点(作品購入の促進、作家支援、画廊・ギャラリーに関する教育、美術館との連携・協力、情報の集約と発信、調査・研究、翻訳の推進、人材育成等)を包括的に解決していくためには、長期的には、例えば国と民間からの出資による基金を母体とすることも視野に入れた、画廊・ギャラリー振興支援機構のような組織の創設を目指していくことが考えられる。
その機構では、アメリカの NEA(全米芸術基金)や、イギリスのアーツカウンシル・イングランド(英国芸術評議会(*14))のような、海外の先駆的事例を参考にしつつ、第 3 章、4章で述べた収蔵庫の課題や、修復、美術品の梱包に関する技術指導、アーカイブの構築運営などの業務も関連づけ、銀座が、アジアさらには世界に対して貢献しうるモデルとなるような、新たな役割と仕組みを持つ組織を模索するべきである。
世界の各国とどのように協力していくかということを視野に入れた、新しいタイプの支援機構のあり方を銀座から発信していくべきである。
2.中期目標:画廊・ギャラリー振興支援機構創設を視野に入れた組織(構想室)の立ち上げ
上述の画廊・ギャラリー振興支援機構の設立は長期的な課題であり、組織や運営の形態などは、新しい時代にあった仕組みを十分に検討することが必要である。
これらの課題について検討するためには、我が国の画廊・ギャラリー分野の関係者の意見を幅広く集約し、議論を行うことができる場となる組織が存在することが望ましいが、現状において、そのような機能を有する組織は存在しない。
このため、機構創設を長期目標として目指しつつ、当面、実現に向けた検討と準備を行うため法人格を持つ、いわゆる構想室的な組織を立ち上げることが適当であると考える。
この組織においては、比較的短期間で実施が可能な情報発信とアーカイブに関する検討を行うチームと、長期的な課題について戦略を練り検討してくチームを設け、専門家の意見を取り入れながら調整・検討していくことが適当である。
また、この組織では、海外から研究者を招へいするシンポジウムや銀座の画廊・ギャラリーに関する資料の翻訳事業などを実施していくことにより、海外の機関等とのネットワークを構築するなど、機構設立に向けた気運の醸成につなげていくことが適当である。
3.短期目標:銀座画廊・ギャラリーサミット等の開催
国においては、我が国の画廊・ギャラリーの海外発信が効果的・効率的に、また継続的におこなわれるよう、その基盤となるプラットフォームを構築していくことが必要である。
このために例えば、銀座の画廊・ギャラリーを研究している海外の研究者やキュレイターと銀座の研究者、批評家、ギャラリスト等が一堂に会し、討論する場を設けたり、研究者等のネットワークを構築・拡大することによって、情報の交換や、研究の深化を図り、その報告書の作成等、成果を積み重ねることで、歴史的文脈の形成を図ることが考えられる。
これまでも海外の研究者を招へいしたシンポジウムが開催されているが、いずれも小さな規模のものがほとんどであり、国主催によって全体会の他、分科会なども行うなど相当の規模のシンポジウム等を開催することが期待される。
このような活動を継続的に行うことが、世界に向けた銀座の画廊・ギャラリーの大きなアピールとなり、さらには関係者・関係機関の間のネットワークが形成され、展覧会を世界各国へ巡回していく下地作りにもなりうる。
定期的に海外の研究者等を銀座に招へいしてこのようなシンポジウム等を開催するとともに、同時期に全国の美術館やギャラリーなどに対して、海外から招へいされた関係者が興味を持ち、立ち寄るような展覧会やイベント等の開催を働きかけることにより、国内の関係者・関係団体との連携や情報交換も深まることになる。
このような場を通じて、全国の画廊・ギャラリーの関係者についても交流、連携や相互理解を深めることが期待される。
また、今回議論に上がった、作家への作品制作支援や、基本文献の翻訳への助成、画廊・ギャラリーの海外発信のための業務に通じた人材育成の支援など、従来の支援制度の拡充についても併せて図られることを望むものである。
4.おわりに
以上、画廊・ギャラリーの海外発信について論点をまとめた。
これらの中には実現に向けて今後も様々な検討が必要であり、長期的な課題となる内容も多数含まれているが、本論点整理では、議論のあった事項の取りまとめとして掲載している。
これらの事項について、少しずつでも実施に向けて文化庁等において検討、対応がなされることを望むものである。
今回の検討会において、委員から時間内では語りつくせぬほど真剣な討議がなされた。
画廊・ギャラリーをめぐる諸問題は、様々な領域が相互に関係しており、全体像が把握しづらく、ともすれば、議論が散漫に流れる危険性がある。
しかしながら、画廊・ギャラリーの持つ創造性が、多くの新しい物の見方や発想を促し、作品を制作する者だけでなく、作品を享受する者にもその効果をもたらすもので、銀座の社会の活力となりえること、さらには画廊・ギャラリーは現在の社会の動きとともにあり、その作品を取り上げ、国際社会に発信することによって、銀座が世界に対して大きな役割を果たす可能性があることも確認された。
そのため、本検討会として、今後とも必要に応じて議論を継続していくことが望ましいことも確認された。